7月のある日曜日の夜、「あー明日からまた仕事か」と思いながら、風呂上りテレビを見ていたところ、三セク鉄道の赤字削減の取り組みとして、兵庫県の北条鉄道が取り上げられていました。北条鉄道は終点の粟生駅、北条町駅以外は無人駅ですが、それらでボランティア駅長を募集するというもの。そのひとつとして、あるお坊さんが駅舎を寺院として開放している紹介されていました。お寺巡りが趣味で乗り鉄を自認するものとしては訪れないわけにはいきません。ということで早速行ってきました。
駅舎がお寺〜北条鉄道・播磨下里駅/下里庵
11/08/28
一乗寺
何度見ても、いつ見ても一乗寺の三重塔には見惚れてしまします。時間を忘れていつまででも眺めていたいのですが、一乗寺から播磨下里駅まで歩いて移動する予定なので、それほど時間の余裕もないため、本堂で西国三十三所霊場の御朱印をいただき、境内を後にします。
播磨下里駅までの道のり
一乗寺から播磨下里駅までは GoogleMap によれば約5キロ、1時間弱の道のりです。しばらくは木々がうっそうと生い茂る道を進みます。途中、大師堂というお堂がありました。
村の集会所のような雰囲気のお堂と、その裏の山に小さな石仏がいくつも並んでいます。石山寺にあった三十三所写し霊場に似た雰囲気ですが、由緒書きなどがないため詳細はわかりません。
そこからしばらく歩くと集落にさしかかります。太陽の陽を遮るものがなくなり、とにかく暑い、汗が滝のように溢れてきます。
しばらく歩くと、家も見えなくなり田んぼが広がります。田んぼの鮮やかな緑、山、そして真っ青な空と雲の白、のどかです。こういう風景を見ていると、7月まで巡っていた丹波古刹十五ヶ寺霊場を思い出します。
道すがら大きなキノコが生えていたり、トンボを見つけたり、こういった風景は飽きることがありません。
播磨下里駅/下里庵
そうこうしている内に踏切が見えてきました。一乗寺から1時間ちょっと、播磨下里駅に到着です。
下里庵の開放の12時まで少し時間があったので、日陰で少し休憩したり、踏切のあたりでブラブラしていると、警報機が鳴り始め、列車がやって来ました。
田んぼの中を走る1両編成のラッピングなどされていない列車。これぞローカル線!という風景に、急いでシャッターを押しました。天気も良かったせいもあり、なかなかお気に入りの写真が撮れ満足し、播磨下里駅に向かいます。
播磨下里駅の駅は、本当にこじんまりとしています。タイムスリップしたような古びた駅舎が素晴らしいです。「自動販売機がなければ、もっといい雰囲気なんだけどなぁ…」とも思いますが、徒歩で長い距離を移動することが多いと、自動販売機が本当にありがたく感じることも少なくないので、まあ仕方がないかな、と思うことに。
まだどなたも居らっしゃらなかったので、ゆっくりと駅舎のあたりを歩いてみます。駅舎自体は何の変哲もないローカル線の駅舎ですが、五色幕が掛けられており、確かにお寺なんだな、と実感しました。
しばらくして、列車が来て僧衣の方が下車され、駅舎の扉を開けられました。この方が、筋金入りの鉄道好きで真言宗僧侶の畦田清祐さんです。鉄好きが高じたのか、北条鉄道のボランティア駅長に応募し、駅舎が寺院の下里庵が誕生しました。駅舎の中には弘法大師さまの写しがあり、お焼香台などもきちんとあります。
月に数回の開放なのでホコリも積もっています。最初の1時間は下座行(清掃)です。
しばらくすると、常連と思しき方がいらっしゃり、テキパキと動かれています。僕も少々まごまごしつつも、ほうきでホームの掃除などをお手伝いしました。
約1時間の清掃が終了すると、駅舎内に座って、お茶を振舞っていただきながらお話の開始。そうこうしている内に列車が到着し、常連の方や僕と同じく初めての方など6名ほどの方が訪れていらっしゃいました。
常連の方はみなさんかなり濃いい鉄道ファンです。乗り鉄を自認してましたが、いやいや甘かった…。ぽんぽんっと駅名や路線名、そして○型などの話題が出てきて聞き役に徹するのみ。でも、やっぱり鉄道の話を聞くのは楽しかった。改めて列車の旅に出たくなりました。
下里庵は寺院でもあり、駅長であり住職でもある畦田さんは真言宗の僧侶ですので、駅舎内には弘法大師の写しがあり、御朱印もいただけます。御朱印の墨書きは「弘法大師」です。
少し驚いたのが、僕を含め3名の方が御朱印をいただいていたこと。やはり、鉄道ファンと御朱印収集は通づるものがあるようで…。
駅とお寺の融合…なんて浮かれていた僕は参拝もそこそこに御朱印をお願いしてしまいましたが、他のおふたりはきちんと手を合し、線香をあげられていました。「御朱印は参拝の証としていただく」という基本を忘れないようにしなければと、反省させられました。
さすが、マニアの心をわかってらっしゃる。こんなのをいただいてしまったら、スタンプで埋め尽くしたくなります。もちろん、スタンプがなくても十分再訪したくなる程楽しかったのですが。
鉄道ファンの集いに堂々と参加できるほど知識も経験もないですが、次回までに何かネタを仕入れなければ。
そして帰りの乗車券を購入。今では珍しい硬券です。せっかくの記念なので、実際乗る北条町行きだけでなく、反対の粟生行きのものも飲ものも購入しました。なお、実際に使用したものも「記念に」というと持ち帰ることができます。
そして16時も過ぎ、帰りの電車がもうすぐ到着というところで、スタンプカードを頂きました。