熊野那智大社・青岸渡寺

 大門坂からの石段を登りきると、お土産物屋さんなどが並ぶ道に出ます。ここからもさらに階段を登ります。

 途中、雨が降り出し、昼時でお腹も減ったので、日本庭園が綺麗な瀧泉閣清涼亭という休憩所で一休みしソバをいただきます。窓から那智の滝も臨める絶景です。食事後にコーヒーを飲んでいると雨も止んできたようなので、店を出てまずは熊野那智大社に向かいます。

 腹ごしらえも済ませたので、足取り軽く階段を登ります。

 階段の途中、大きな鳥居が見えてきた辺りに「西国第一番札所」と刻まれた石碑があります。階段を左に進めば那智大社、右に進めば青岸渡寺です。那智大社と青岸渡寺は隣接、ほぼ同じ境内にあるといっても過言ではない位置関係にあり、神仏習合の時代の名残を感じさせます。

 那智大社と青岸渡寺の参拝を済ませ、御朱印をいただいた後、三重塔に向かいます。三重塔は内部拝観可能、2・4階部分が展望所になっており、エレベーターもあります。詳しい参拝記はこちらをご覧ください。

熊野那智大社 / 青岸渡寺

妙法山阿弥陀寺・道中

 三重塔の拝観を終えたのが14時ごろ。駅に向かうバスの最終が17時40分ということで、3時間以上余裕があるということで、青岸渡寺の鐘楼から山中を進む道で那智三峯のひとつである妙法山の頂上近くにある阿弥陀寺に向かうことにしました。案内看板によると、阿弥陀寺まで50分ということで、往復して、那智の滝のすぐ近くにある飛瀧神社に寄ってからバスに乗れるな、と計算したのですが…。これが大きな間違い。ゆっくり歩いたというのもありますが、阿弥陀寺まで2時間近くかかってしまいました。

 山道を歩き始めると、これまでの風景と一変、本当に山深い道です。コンクリートの人工物もすっかり苔に覆われています。一応、石段が整備されてはいるのですが、通る人が少ないためかすっかり落ち葉に覆われている所がほとんど、しかも石段の幅が一定ではないので、少々歩きづらい。とはいえ、それほど急傾斜ではないので、滑りにくい靴で注意して歩けば危険ではありません。しばらくは森のマイナスイオンを感じながら気持ちよく歩いていました。

 霧なのか、山を登って雲の中に突入したのかわかりませんが、白く靄がかかってきます。歩けば歩くほど、靄が濃くなっていきます。

 前が見えない、というほどではないですが、今まで見たことのないような非常に神秘的な風景となりました。そしてこの靄と太陽の木漏れ日のおかげで、とても美しい光景を目の当たりにすることが出来ました。

 水分を湛えた蜘蛛の巣が太陽の光を反射して、美しく光り輝いています。蜘蛛の巣がこんなに美しいと思ったのは初めてです。

 また、多少木々の隙間が広いところでは、靄に反射した木漏れ日のラインを描いている様子もとても美しかったです。

 山中を進んでいると、空気が冷たくなるのを実感します。青岸渡寺の辺りとは2〜3度は違うのではないでしょうか。ところどころ空気の流れる道があるようで、短パンを履いてくるぶしあたりが出ていたせいもあり、ヒンヤリとしたものを感じることがありました。

 本当に美しい風景が続いているのですが、予定50分を過ぎても到着する気配すらしない。後どのくらい歩けばいいのだろう…不安になります。

 そして1時間半ほど歩くと、電柱が!いつもなら写真に写り込んで台無しになると忌み嫌っている電柱ですが、久々の人工物を目にし、もうすぐ到着では!?とテンションが上がります。そして、電柱から約10分、とうとう到着です。

妙法山阿弥陀寺

 阿弥陀寺付近に来るとますます靄が濃く、山門をくぐっても本堂がはっきりと見えませんでした。

 阿弥陀寺は女人高野とも呼ばれる古刹で、死者は必ず阿弥陀寺を訪れ、鐘を打つ「死者の霊魂が詣でる寺」といわれています。

 まずは本堂でお参りし、御朱印をいただき、地蔵堂などを回ります。本当なら本堂から徒歩30分程度の奥の院にも行きたかったのですが、すでに16時半頃、日が暮れた山道は危険だろうということで諦めました。

 奥の院は諦めたとはいえ、かなり疲れており、歩いて帰ってもバスの時間には間に合わないため、御朱印を書いていただいた方にタクシーを呼んでいただくようお願いしたところ、タクシーだと高くつくし、私らも車で下山するのでバス停まで送りますよ、と言ってくださいました。感謝です。車中、阿弥陀寺や那智について色々お話をしていただけたのも非常に嬉しかったです。

 無事、バスに間に合いホテルに戻り、温泉でゆっくり疲れを癒し、最終日の熊野本宮大社と、この日行けなかった那智の滝直下の飛瀧神社に備えます。