アクセス

 大峯山という単体の山は存在せず、吉野から続く一帯を大峯山系と呼ばれ、そのうち大峯山寺があるのは標高1,719メートルの山上ヶ岳です。

 公共交通機関を利用する場合は、近鉄吉野線の下市口駅から奈良交通の洞川温泉行のバスで約1時間、終点の洞川温泉で下車します。バス停から温泉街を歩くこと約1時間で女人禁制門のある登山口に到着します。登山口から大峯山寺まではゆっくり歩いて約1時間です。

 日帰りの場合は、下市口駅を8時17分に出るバスに乗り、帰りは洞川温泉を17時55分に出るバスで帰ることができます。※バスの時間は5月〜11月。それ以外の季節は本数が少なくなります。

洞川温泉・龍泉寺・母公堂

 温泉街を抜けると日本名水百選にも選ばれた「ごろごろ水」の汲み場があります。車で来る場合は駐車料300円が必要ですが、徒歩の場合は無料です。ここで持ってきたペットボトル1つを空にして水を汲んでおきます。

 バスを降りてすぐにある橋を渡らず左手側の道を進むと大峯山寺の護持院の1つ龍泉寺があります。登山の安全をお祈りし、御朱印をいただき、洞川温泉街に向かいます。

 趣のある温泉街です。陀羅尼助や白装束などの販売店も並んでいます。ここではぜひ、木の杖を購入しましょう。あると登山がだいぶ楽になるだけでなく、焼印を入れてもらえばとてもよい思い出になります。

 さらに歩くと、以前の女人結界の跡があり、その側には母公堂があります。こちらは大峯山寺の開基であり、修験道の開祖・役行者の母親がまつられているといいます。手を合わせていると美味しいコーヒーを振る舞って頂けました。こちらでも御朱印をいただき、いよいよ女人禁制門がある清浄大橋に到着です。

女人結界門からの登山・西の覗

 この日は天気の良い週末ということもあり、大峯山寺を目指す方も多くいらっしゃいました。その内のかなりの数の方が白装束の山伏姿や、講といわれる団体でした。

 女人結界門の前では、同じく白装束の女性の方々が男性陣を見送っていました。

 この門をくぐればいよいよ聖域・大峯山のやじまりです。この時点でただの登山ではない雰囲気が漂っています。

 しばらくは杉が立ち並ぶ登山道です。それほど傾斜も急でなく、足元も整備されているので歩きづらくありません。もちろん、ところどころ岩や木根のせいで歩きづらいところがありますので、足首を守るためにもハイカットのトレッキングシューズがお勧めですが、普通のスニーカーで登っている人も少なくありませんでした。また、一人で登っているとどうしてもペースが早くなり疲れてしまいますが、先達が率いる講の後ろを付いて行けばペース配分も参考になり楽に登ることができます。

 途中、幾つかの茶屋や陀羅尼助の販売店などがあります。杖への焼印や鉢巻への押印などもできます。また飲み物や食料も販売しています。トイレもありますので、大峯山開山期間中であれば快適な登山を楽しむ事ができると思います。

 大峯山手前の最後の茶屋で、吉野と熊野を結ぶ世界遺産の奥駈道との合流点にある洞辻茶屋の付近になると広葉樹が増え、眺めも良くなります。

 そしてところどころ鎖を使わないと登れないような急な箇所が出てきます。この辺りは足に疲れも溜まっている頃ですので、油断せずゆっくりと慎重に進みます。

 そして目の前に現れる最初の行場「鐘釣岩」。体験してみたかったのですが、あまりに急だったことと、一人なので無理をしないと決めていたので迂回し、上から覗いてみるだけにしました。行者像のある上から覗いた風景は…。股間がキュッとなりました。

 とはいえ、せっかく大峯山に来たのに行場を経験しないのはもったいない。ということで、崖から吊るされる有名な「西の覗」は体験することに。こちらは係の人がいるので、800円(鉢巻を購入する場合は1,000円)を支払えば体験できます。命綱で支えられていると分かってはいても、下は落ちれば確実に命を落とすであろう断崖絶壁、とにかく怖い!「親孝行するかー」と問われ、大声で「はい!」と返事しました。とにかく怖かった。でも良い体験です。

 この西の覗をすぎれば大峯山寺の本堂はすぐ近くです。

大峯山寺・裏行場

 西の覗から少し歩くと、麓にある龍泉寺と吉野山にある4つの寺院の計5つの護持院の宿坊が見えてきます。事前に申し込めば一般の人でも宿泊できるようです。またそれぞれの宿坊でも御朱印をいただくことができます。左から龍泉寺、櫻本坊、喜蔵院、東南院、竹林院の宿坊の御朱印です。

 宿坊群を抜けるとついに大峯山寺の山門、そして本堂に到着です。標高1,700メートルにある本堂は決して巨大でも豪華でもありません。しかし、どっしりと落ち着いた、そして凛とした雰囲気が漂っています。ヘリコプターもない大昔に、この山頂にこれだけの建造物を建てた昔の人の信仰心には頭が下がります。

 本堂でお参りをしたあと、御朱印をいただき、杖に焼印を入れて頂きました。バスを降りてから約4時間、疲れましたが心地よい達成感でいっぱいです。しかし、これで終わりではありません。西の覗で知り合った2人組と一緒に裏行場を体験することに。こちらは危険なため一般の立入りは禁止、先達の先導が必須とのことです。僕たちは宿坊櫻本坊の方に案内していただくことになりました。

 急な岩場をいわれた通り登っていきますが、体を支えるものは一切無く、足を滑らせれば死んでしまう、そんな緊張感と恐怖がいっぱいの行場です。そんな中、サンダルで軽々と登っていく先達はさすがです…。いわれた通り足を運び、何とか無事に行場を終えることができました。

 予定していなかった裏行場を回ったため急ぎ足で下山。急ぎすぎて膝を少し痛めてしまいましたが余裕を持って下山でき、再度母公堂でコーヒーを頂き、温泉街をブラブラして帰りのバスに乗り込みました。

 始めての1,700m級の登山、久しぶりの長時間の歩き、厳しい行場などなどでくたくたになりましたが、山伏が普通に歩き、法螺貝が鳴り響く異世界を体験でき、非常に満足な1日でした。