みちのくの旅(恐山の温泉・宿坊)

 
 

恐山宿坊・吉祥閣

 寺務所で御朱印をいただいた後、予約しておいた宿坊「吉祥閣」に向かいます。吉祥閣は境内、寺務所のすぐ裏手にあります。

 数年前に建てなおされたそうで、立派な旅館と見紛うような立派な入口、そしてロビーです。受付を済ませて部屋まで案内して頂きます。

 部屋もこれまた立派。8畳と4.5畳の二間で、トイレと洗面所が完備されています。お茶のセットも置いてあります。ただ、テレビがなく、禅の本が置いてあるのが、一般的な旅館と違う点です。小さな虫が入ってくるということで窓をあけることは禁止されています。

恐山の温泉

 恐山の境内には2つの男湯(冷奴の湯、薬師の湯)、1つの女湯(古滝の湯)、1つの混浴(花染の湯)の温泉があり、先述の通り入山した人は自由にはいることができます。

 宿坊にチェックインし、荷物を置いてタオルを持って外に出たのが16時頃、まだまだ境内には人がたくさんいました。2つの男湯は地蔵堂に続く参道の脇にあり、多くの人が歩いていて、窓から覗き込んでいるので落ち着いて温泉にはいる雰囲気ではありません。

 一方、混浴の花染の湯は宿坊の裏手にあり、ほとんど人も通りませんので、まずはこちらにはいることに。

 あたりには白い煙が立ち込め、ところどころ「ボコッ」と音をたてながら温泉が湧いていました。お風呂は本当にほったて小屋のような建物です。

 温泉成分が非常に強く、「入浴は3分から10分、目に入ると危険なので顔を洗わない」など注意書きがはられています。そして換気のため窓が開けっ放し。幸い、人通りも少ないのでゆっくりとはいることが出来ました。

 肝心のお湯はというと、とにかく、本当に素晴らしかった!まさに温泉です。適度に熱く、しばらくつかっていると、体から疲れが溶け出すようです。

 数分温泉につかって、外に出て涼み、またつかるを何回か繰り返し、宿坊に戻り、今度は宿坊の大浴場に入ります。

 大浴場にも、外湯と同じお湯がひかれています。誰もおらず、広い温泉を独り占めできました。大浴場には洗い場も完備されています。寝台特急を利用したので、まる1日以上洗髪していなかったので、本当にすっきりしました。

宿坊の夜、食事と説法

 風呂上り、部屋でしばらくゆっくりしていると食事の時間に。宿坊での食事は全員揃って18時に大食堂(だいじきどう)で食べます。

 食事の前に、僧侶の方の後に続いて、箸袋の裏に書かれた「五観の偈」の食前の偈を唱えます。ちなみに箸は記念に持って帰ることができます。

 食事は当然、精進料理です。品数も多く、デザートにメロンまでついています。おかずの量は少なく見えるかもしれませんが、ご飯はおかわり自由で満腹になります。おかずの味付けはシンプルなものですが、特に白米の美味しさが際立ちます。

 30分ほどで食事を終え、食後の偈を唱えて解散。19時からは同じ大食堂で住職代理の説法があるということで、それまでの間、閉門後の恐山をしばらく歩いてみました。

 昼間以上に、より荒涼とした雰囲気が漂っています。街灯もなく陽が落ちると何も見えなくなるので、早めに宿坊に戻り、説法に出席しました。

 説法は時期的なものあり東日本大震災についての話を含む約1時間でした。中でも興味深かったのが「なぜ恐山には、多くの人が訪れるのか」というお話。人は死んだら消えてなくなるのではなく、別の形で存在し続ける、その別の形で存在する人に会いたいと願う人が恐山に来るのだというお話でした。

 説法をなさった住職代理の方のオーバーリアクション気味な話し方に、最初は少々違和感を感じましたが、色々と考えさせられる素晴らしい説法でした。

 説法の後は、昼間入れなかった境内の外湯につかって、10時頃早めに床につきました。

朝のお勤めと境内

 朝は6時半からお勤めがあります。地蔵堂での祈祷と本堂での供養に参加します。恐山は6時から開門のため、宿坊に泊まっていない人も朝のお勤めに参加することができますが、ご祈祷の際に名前を読み上げていただけます。

 お勤めの際、恐山について住職から色々とお話を伺うことができます。恐山の御本尊である地蔵像は、他にはあまり例のない衣を着たお像ですが、夜な夜な恐山を歩かれ、成仏できず苦しんでいる人を助けられるそうです。そのため、朝、地蔵堂に戻られると、その衣が夜露に濡れていることがあるのだとか。

 朝のお勤めの後、7時から朝食です。夕食と同様、とても美味しい精進料理でした。

 朝食の後、大浴場で朝風呂を浴び、身支度をして朝の境内を歩いてみます。

 すでに開門はしていますが、境内にはほとんど人はおらず、ゆっくりと見てまわることが出来ました。

 少し曇り気味の天気が、より一層雰囲気を高めてくれます。

 普段なら避けたくなるカラスも、恐山という場所では、その雰囲気にピッタリです。そして宇曽利湖が本当に綺麗でした。奥に見える山々と雲、そして黄色から青色にグラデーションを描く湖面は、まさに「極楽浜」です。本当に来てよかったと思える光景です。

 人のいない境内をゆっくり散策し、宿坊に戻り少し休んだ後、10時前にチェックアウトし、バス停に向かいます。

 楽しみにしていた恐山、やはり宿坊に泊まるゆっくりとまわることにしてよかったです。大満足で恐山を後にし、青森駅に戻ります。